( A )ではダブルウイッシュボーンの機構がよく分かります。ノーマルのアームはサンドブラスターの後、さび止めと再塗装です。ブッシュは新品に交換です。フロントショックはオイル漏れがあり新品交換です。スパックスの車高調整付きにしました。ビルシュタインが好きで、チャップマンおじさんもお薦めですが、エラン用はワンオフで作製する必要があり今回はあきらめました。10人くらい集まれば何とかなりそうですよ。その他のショックオブソーバーの情報は個体差研究会(その3)を参照して下さい。
スタビライザーもノーマルです。ブッシュの交換には特殊工具の作製が必要で大変でした。
トラニオン(黄色矢印)はシンチュウで作られています。エランのバーチカルリンクのサスペンションへの接合部は、上はボールジョイントで下はトラニオンです。
トラニオンには素晴らしい工夫が盛り込まれています。ステアリングを切るとバーチカルリンクがその軸を中心に回転します。単なる軸受けではその場で回転するだけですが、トラニオンには大きな溝が切ってあり、その回転に従って数 mm 上下動します。カーブの外輪側が上がり、内輪側が沈みます。コーナリング性能に少なからず影響があります。考え方としては、現代のアクティブサスペンション機構に通じるものがあります。
それゆえ、トラニオンにはデフやミッションに準じた潤滑が必要です。40年前にこの工夫を考え出したエンジニアの知恵には感動します。また、素人の管理人はシンチュウ製で持ちこたえられるのだろうかと疑問を持ちましたが、オイルの潤滑で見事に克服した知恵にも感動します。
綺麗に塗装されハブなどと組み付けられます。
アームストロングの車高調整式のストラットにコニーのショックです。リアーストラットとリアロアアームは錆び落としの後、再塗装しました。リアーのショックは健全でした。ベアリングハウジングは鏡面仕上げです(←)。スプリングは前後とも付いてきた物をメッキ仕上げします。チャップマンおじさんの特別のはからいで、上の写真のサンドブラスターを使わさせていただき、自分で錆び落とししました。が、これが後に大問題になります。
エランのリアーサスペンションの形式は、チャップマン ストラットと解釈するのが一般的ですが、専門家のなかでは、ロータス18やエリートの形式を狭い意味でチャップマン ストラットとし、エランはその改良型でなのでチャップマン ストラットとは言えないとする人も居るようです。エリートとエランのリアサスの比較は エランの紹介 を参照して下さい。
ストラット式のサスペンションは、ストラットに曲げの力がかかり、ストロークがスムーズに出来なくなるという欠点が指摘されています。後の車では、スプリングをオフセットして対応したり、スパイダーのリアーサスペンション コンバージョン キットのように、ダブル ウイッシュボーン化して対応するように進化した例もあります。
ノーマルの状態で組み付けます。サスペンションが付くと、シャーシのみの時よりぐっと大きく感じます。リアー スプリングは 外径 8 cm(内径 2.5 インチ) X 自由長 32 cm でノーマルより細く、短いものです。
ここまで作業が進んで初めて新たな問題点が発覚しました。リアースプリングはノーマルではないことは分かっていたのですが、組み付け作業中あまりに硬いので試してみると、大人3人の体重をかけてもリアーサスが正常な位置まで下がってこないことが判明しました。「アメリカじゃあ、体重が1100 kg 以上の夫婦が乗っていたのかのう?」とチャップマンおじさん。せっかくリビルトしましたが、使用を断念しノーマルのバネレートでサイズの合うバネを探すことになりました。
色々調べた結果、スパイダーのリアーストラットを車高調整式に変更する際のスプリングが、2.25 インチでノーマルレートであることが分かり、イギリスに注文しました。バネは安いが送料がバネより高くつきました^^;。少し意地になってフロントスプリングもノーマルをついでに購入しました。中央はアルミ製のアッパーのスプリングハウジングです。
この調査で、「最近のスプリングはとても硬い」ことが判明しました。エランのノーマルスプリングはとてもやわらかい設定です!ノーマルさえ押さえておけば、硬いスプリングを手に入れることは比較的容易です。ようやく問題解決です(^○^)。
フロントはかなり強くバネを縮めて装着する必要があり、作業は難渋しました。フロントは内径、自由長、バネレートなど全くのノーマルスプリングです。ただし、スパイダー製でクロームバナジウムで出来ています。リアーは内径 2.25 インチ、自由長 41 cm バネレートはノーマル、フロントと同じくクロームバナジウムで出来たスパイダー製です。nomi 号についてきたスプリングはどうもデーブビーンのステージUのスプリングのようです。次にスプリングレートを測定して検証してみます。
チャップマンおじさんによると、きちんとスプリングレートを測定する装置もあるそうです。とても原始的な方法でお恥ずかしいのですが、一応、やってみました。まず、おもりの重量( A kg とします)を測定します。管理人 nomi は約 16 kg の金床を使いました。重いほうがグッドです。バネの上端にインジケーターを付けます。茶色の物差しを使いました。バネに平行に、すなわち、地面に垂直にしるしが付けられるようにします。子供の身長を柱の傷で測る要領です。おもりを載せる前と後のインジケーターの位置にしるしを付け、この間の距離( B mm とします)を測ります。
A / B の値が kg / mm 単位でのスプリングレートになるはずです。実際にやってみると、バネを垂直に保つのが結構難しく、それによって B の値は容易に変化します。
nomi 号についてきたスプリングは、フロント約 2 kg / mm (デーブビーンのステージU?、ノーマルは 1.34 kg / mm 。)、リアー約 3 kg / mm (デーブビーンのステージVより硬い?、ノーマルは 1.2 kg / mm 。)でした。ノーマルではフロント側が1割程度硬い設定になっていますが、そのままではかなり硬く、しかも前後のバランスが逆で、コーリンお父さんの設計とはかけ離ていたことになります。到底エランらしい足回りとは言えませんでした。
「スプリングを含めて、まずはノーマルの足からはじめること。そうせんと、コーリンお父さんに失礼じゃろう。」とチャプマンおじさん。エラン用スプリングの詳細は個体差研究会(その3)を参照して下さい。
レストアの集大成として、グリースニップルが取り付けられトラニオンにグリースが注入されました。
車高調整は一番低い状態で組みました。ガラスやドアなどの重量物の取り付け前は腰高な感じで心配していました。ほぼ組み付けが終了した状態で、私より少し体重の軽い BB さんに運転席に座っていただき、ガソリンはほとんど空の状態で、丁度良いところまで下がって来ました。これより高くすることは容易なので安心です。
駆動系のレストア に続きます。