まとめると簡単そうですが、実際には約1年を要したチャップマンおじさんの苦労の結晶です。
nomi 号は ブリティッシュ レーシング グリーンに塗られていましたが、夢から覚めてよく見ると、表面にはオリジナルカラーの赤や、ぶつぶつ、ファイバーの割れがあちこちにありました。チャップマンおじさんによると、このぶつぶつは下地作業中の水分が残っているのが原因で、塗装後相当時間が経っても発生してくるそうです。チャップマンおじさんはボディーのレストア作業の全ての工程で水を使うことはありません。
全部の塗装面とゲルコートをはがしファイバーの層を出します。次々に古傷が現れ、nomi 号の歴史がかなり正確に推理出来ます。考古学の研究のようです。削り過ぎると台無しなので、作業は少しずつ進めます。細かいところは手作業です。( A )では、オリジナルのバルクのある ストロンバーグ キャブ用のボンネットではなく、未塗装のバルクのないものが見られます。これはレース用の軽量化されたボンネットで、前オーナーの N 氏が導入されていました。ボディーそのものはオリジナルでした。
シャーシに固定されていた時には分かりませんでしたが、固定がはずれると、なんと、左フロントフェンダーは 1.5 cm も短く、また、1.5 cm 高くなっていました。nomi 号の顔は歪んでいたのです。そこで、チャップマンおじさんはフロントフェンダーを上下に切断し、延長すると言う大胆な手術を行い、その美貌を見事によみがえらせて下さいました。矢印は切断し補修した部分を示します。それにしても、アメリカ人の仕事は手荒です。
上の写真はボディーをシャーシに固定する穴を左右で比較しています。スパイダーシャーシは出荷時には穴が開いていません。従って、アメリカでの作業では、フロント、リアーともにこれだけの差があるまま、無理に固定されていたことがわかります。
組み立てが進んで、シャーシの加重がかかりはじめて(リフトでアップした状態で)判明したのですが、右フロントフェンダーのシャーシ固定部分の修復に、主にパテが使われていたため、割れが進行してきました。チャップマンおじさんは通常走行では多分問題ないと思われますが、丁寧にファイバーで修復してくださいました。
エラン持病のドア下部の外への開きは、nomi 号にも出現していました。約 1 cm のギャップがありました。チャップマンおじさんは自らが開発したスペシャルメニューで新車以上にきれいに合わせてくださいました。( A )( A' )ではドア下部に修正用の仕掛けが見られます。スペシャルメニューはこれだけではなく、あちこちに手が入ります。 黄色エラン号の美しい仕上がり( E 、F )も参照してください。nomi 号の仕上がり具合は次ページのボディーのレストア(その2)を参照して下さいエラン オーナーの皆さん、諦めることはありませんよ!!
リアーフェンダーも左側が醜く、チャップマンおじさんは一層の極薄ファイバーを追加して下さいました。ホイールアーチに割れが見られます。これは事故によるものと思われますが、これ以外にも、ファイバーが十分に行き渡っていない縁の部分は、樹脂成分が劣化し茶碗が欠けるような割れが出来ます。
nomi 号はオリジナルではモールが付いているタイプであることが判明しましたが、レストア後は付けません。後に知ることになったのですが、モールが付いているのは S/E だそうです。ラジオも付けないのでアンテナ用の穴など不要な穴は全て塞ぎます。チャップマンおじさんの仕事に妥協はありません。
補修が進み、だんだん美人になります。「顔はちょっとした違いで印象が全くかわるんで大変じゃー。」。写真ではうまく表現できないのが残念ですが、( A )ではチャームポイントの目玉もかなり歪んでいました。( C )では、何度も調整したおかげで、ピッタリの美人顔に整形されています。この作業には、Ma クンが助手として大活躍してくれたそうです。チャップマンおじさんの仕事は芸術的です。
(A )左ハンドル時代の穴を塞ぎます。これも、後から知ったのですが、エギゾースト系との干渉を考慮して、この部分は小さく作りなおしたとのことです。(B )リアーサスペンションがボディーに干渉してできた割れを修復します。ここでもチャップマンおじさんは手を抜かず、箱型の一体として補修して下さいました。剛性もかなりアップするでしょう。室内の他の穴の補修状態や、用いたファイバーも一緒に写っています。写真にはありませんが右のペダルボックスにも割れがあり修復して下さいました。
パテでファイバーの傷や歪を矯正します。パテは必要最小限の使用に留めます。根気が必要な仕事です。チャップマンおじさんは納得するまで繰り返します。管理人 nomi は( A )、( B )の状態でてっきり完成と思いましたが、チャップマンおじさんは再び( C )、( D )のように修正を追加します。決して、写真の順番の間違いではありません。
スプレーパテでほとんど出来上がりに近い状態にまで仕上げます。この時点でも不十分なところは手触りを頼りに修正します。エランのバンパーはファイバー製で中にウレタンが詰められています。とても軽いバンパーです。ボディーとのつながりもとても美しいと思います。
チャップマンおじさんは、約14ヶ月後の、2004年3月8日にようやくOKを出しました。(誤解を避けるために追加しておきます。チャップマンおじさんは、この間 nomi 号に掛かりきりであったわけではありません。ファイバー ボディーのレストアは鉄のボディーより時間がかかるのは確かですが。)
塗装はチャップマンおじさんの古い友達の K 塗装屋さんに依頼しました。仕事には定評があります。塗料は、長年の経験から、最も深みがあって美しい”シッケンズ”が選ばれました。チャップマンおじさんから細かい指示があり、作業には数ヶ月を必要とします。ボディーカラーは、70年代の”ブリティッシュ スタンダード”からロータス指定のロイヤルブルー、フレンチブルー、ウエッジウッドブルーのサンプルを用意していただき、迷った末にウエッジウッドブルーにしました。親切に相談に乗ってくださった青エランさん、ありがとうございました。また、バンパーも、PINCHIN JOHNSON REFERENCE のナンバーで 6170A8020 の純正色にしました。
2004年は台風の当たり年で、広島もかなりの被害がありました。そのため自動車の修理や塗装もひどく混雑しました。塗装の仕上がりは2005年にずれ込みました。
(その2) に続きます。